ワンオペ結婚式

ワンオペ育児に奮闘している現在だが、思い起こせば、ワンオペは今に始まった話ではなかった。結婚式の時点で、すでにワンオペだったのだ。

 

結婚前に、夫は既に縁もゆかりもない遠方の県に転勤していた。現在でも激務だが、当時は駆け出しなこともあってさらに朝も夜もない激務だった。さらに運の悪いことに、その激務をさらに激務にする事態が発生していた。私はひとりで結婚式場を決め、打ち合わせをし、決めなければいけないことを決め、荷物を運び入れた。夫はなぜか、「クリスチャンではないので牧師の前で誓うのはやりたくない」ということだけを頑なに言い残し(電話で)、また激務の闇に消えていった。

 

結婚式場のプランナーさんはとてもいい人で、毎回ひとりですべてを手配しなければならない私に親身になってくださった。牧師を拒否する夫の謎の主張にも代案をだしてくださり、おかげでスムーズに準備は進んだ。と、思っていたのだが、途中段階で夫にプランナーさんからそれとなく確認の電話が入っていたということを知る。全く思い至らなかったが、もしこれが、結婚するという妄想に取りつかれた女の迫真の一人芝居だったらという不安をプランナーさんに与えていたと思うと申し訳なくなった。

 

夫は、衣装を試着し決める日だけなんとか都合をつけて会場にやってきた。プランナーさんも実物が存在することを見られて、どうやらこの件は本当らしいとわかり安心されたことだろう。いわれるがままにいろんな服を着ているうちに、貧血で倒れた。夫が。プランナーさんたちも、介抱してくださりながら、「ドレスがきつくて新婦様がという経験はありますが、新郎様が倒れるパターンは初めてです…」とおっしゃっていた。

 

前日段階でも激務にもまれていたので当日まさかの本人なしパターンもあり得るかと思ったが、一応夫はやってきた。さらにヨレヨレになって。女性側のほうが準備に長く時間がかかるので、ちょっと出てくるわ…と言い残し、ギリギリまで戻ってこなかった。後で聞けば、友人たちが企画してくれた二次会で読むサプライズの手紙が、自分でやると言い出したにも関わらず、当日まで白紙で、カフェで一生懸命それを書いていたらしい。友人たちにも、無用なやきもき感を与えてしまい申し訳ない。

 

無事に式は終わり、私がすべて手配をした旅行に出発し、数日間ぼーっとする時間を経て、ようやく夫は少し元気になり、帰国して、また激務の渦に飲まれていった。

 

目が回るような日々の中でこの件はすっかり忘れていたので、自分のワンオペ歴がこれほどまでとは思わなかった。多分数年後には単身赴任になるだろうし、さらにワンオペスキルを高めていく未来しか見えない。いろんな状況の中、こんな人もいると笑っていただければ幸いである。