父ちゃん子にする?:はじめてトーク

妊娠前も、妊娠中も、出産後も、今も、夫はもれなく激務だ。波はあるにせよ、ほぼ子どもが起きる前には家を出て、子供が寝るまでには帰ってこない。

 

そんな夫が私の妊娠中、していたことが一つだけある。それは、産院の先生の、「おなかの赤ちゃんはママの声はいつも聞いています。でも、パパが妊娠中から積極的におなかに話しかけることで、パパっ子になりますよ!」という言葉を聞いていそいそと買ってきた「はじめてトーク」という謎の道具?のようなものでおなかの赤ちゃんに話しかけるということだ。

 

冷静に見ると、結構間抜けな図であった。それに、毎日話しかけているとネタもつきるらしく、「父ちゃんですよ~ 今日も疲れました~ じゃあばいばい~」と最終的には結構適当になりつつあった。

 

しかし生まれた子たちは、見事に父ちゃん子である。

 

厳密にいえば、赤ちゃんの時はそうでもなかった。1か月以上の出張から帰り車に乗り込んできた時、当時1歳くらいだった上の子に「誰????」と完全に忘れられた表情を向けられていたのは気の毒だった。下の子の出産のときも、泣きまくる上の子を抱えて右往左往していたと母に聞いた。

 

父ちゃん子になってきたのは、おしゃべりが上手になった頃以降だろうか。たまに起きている時間に夫が帰ってきたりすると、あらゆることを父ちゃんにやって欲しがる。いつもいる母ちゃんのありがたみを分かっていないとも、いつもいない父ちゃんの希少効果が出ているだけともいえるかもしれないが、夫本人は「はじめてトーク」のおかげだと信じている。まあそこまで喜んでもらえれば、我が家の薄汚れた「はじめてトーク」も本望だと思う。

 

ともすれば子どもとの接点が全くなくなってしまいそうなワンオペ家庭だが、たぶんこの、本人が子どもから求められる感と、そのきっかけを自らの手で作ってきた(関係ない気がしないでもないが)感が夫を育児にかろうじて繋ぎとめている気がする。そう思うと、大きな意味で、産院の先生のアドバイスも一理あるかもしれない。